マッキントッシュの作品には垂直と水平が強調されたデザインが多いように思われますが、むしろその直線的表現にアールヌーボーの曲線美を融合させ、新しいスタイルを確立したところに最大の特徴があります。また椅子の実用性を求めただけでなく建物の一部即ちオブジェとしての美しさを追求した作品が多く見受けられるのは彼が建築家であったゆえかもしれません。
彼のデザインした家具の中で最も広く一般的に知られているのがこの『ヒルハウス』です。椅子と梯子(はしご)が組み合わせたような1400mmもの高い背もたれで知られるこの椅子は別名『ラダーバックチェアLadder Back Chair』と呼ばれています。文字どうり梯子(はしご)の背もたれを持つ椅子というわけです。 その極端なまでのハイバックと抽象的装飾への指向の中に、こ椅子を座るためだけではなく、眺めるものとしても考えたマッキントッシュの意図がハッキリうかがえます。直線を強調した美しい姿は静かに存在を主張し、レイアウトするだけでオブジェとして、その空間を演出してくれるのです。
この椅子は100年も前にイギリスで個人住宅用としてデザインされました。オリジナルはボロボロになった今もまだヘリンズバラのヒルハウス邸の寝室に置かれています。ハイバックの背もたれは人の背中に合わせて少し丸くカーブさせてあり、どこか日本の民芸的な造形には近親感を覚えます。光を浴びるとそのシルエットがまたすばらしく、影までもデザインしつくされているかのようです。
360 度、どこから見ても美しい『ヒルハウス』は、眺めるための椅子ともいえるでしょう。
現在歳末売出し中につき展示はしていませんがご希望があれば展示しますのでよろしくお願いします。

